【永観堂(禅林寺)】見返り阿弥陀ともみじの寺

◎みかえり阿弥陀【重要文化財】
◎「秋はもみじの永観堂」

ゆかりの人物:永観(ようかん)
創建:平安時代

永観堂は「みかえり阿弥陀」につきる。


永観堂(えいかんどう)といえば「みかえり阿弥陀」だ。阿弥陀堂に祀られている。
小ぶりで、正面で拝観する場合は少し距離がある。
しかし、左右に移動してみることができ、向かって右側からみる見返っているお姿が最高にキュート。
正面から右側からと何度でも見たくなるほどだ。

みかえり阿弥陀さま 永観大好きエピソード

みかえり阿弥陀さまはお姿がかわいらしいのはもちろん、その逸話がまたかわいらしい。
とにかく阿弥陀如来は永観(ようかん)住職が大好きなのだ。

みかえり阿弥陀さま 永観の背中にしがみつく

永観は、東大寺で勤めを果たしていた。
その際、東大寺に秘蔵されていた阿弥陀如来像を拝し、宝蔵にしまっておくのはもったいないと嘆いた。
これを聞いた白河法皇はこの如来像を永観に任せることにした。

永観は、後年東大寺を離れ禅林寺に着任することになった。
永観は阿弥陀如来を背負って京へ向かったが、東大寺の僧がそれを取り戻そうと追いかけてきた。

そのとき、阿弥陀如来さまは永観の背にとりついて離れなかったのだ。東大寺の僧はあきらめて帰ったという。

「永観、おそし」

永観がいつものように修行をしていた。
阿弥陀仏のまわりを念仏をとなえて歩いていると、突然、安置してあったはずの阿弥陀仏像が壇を降りてきて、永観を先導しとなえ歩きを始めた。

永観はおどろき立ち尽くしていたら、阿弥陀如来が左肩越しに振り返り「永観、おそし(遅いな永観)」と声をかけた。

この振り返ったお姿を再現したのが「みかえり阿弥陀」。

遅れた永観を待っていてくれる慈悲深さ、思いやりをもって深くまわりをみつめる姿勢、自分自身をかえりみて人々とともに正しく前へ進む姿勢が表されている。

参考:永観堂ホームページ、パンフレット

永観堂(禅林寺)のはじまり

現在永観堂〔禅林寺(ぜんりんじ)〕がある場所は、もとは平安時代の文人である藤原関雄の山荘だった。
藤原関雄が亡くなった際、元東寺の僧だった真紹(しんしょう)が大阪の真言宗の寺をこの地に移し、真言の道場とした。

真言宗から浄土宗へ

永観堂(禅林寺)は創建時は真言密教の道場であったが、永観は念仏布教の道に強く惹かれており、真言密教に加え浄土教の寺院としての役割ももたせた。
永観の没後、13世紀の初め浄土教寺院へと替わった。

永観堂(禅林寺)を浄土教の寺院にしたのは、静遍(じょうへん)僧都。
当初は真言宗の僧であったが、浄土教の念仏義を知るうちにこちらの正しさを確信するようになり浄土教に帰依した。

永観堂のみどころ

臥龍楼


臥龍楼(がりゅうろう)は阿弥陀堂から開山堂をつなぐ廊下。
登り龍のようなダイナミックな起伏があり龍の体内を歩いているように感じられる。

放生池


永観堂は、浄土教の寺で、極楽浄土を表した豪華絢爛な庭があってもおかしくはない。
ところが永観堂の庭は地味だ。
放生池(ほうじょういけ)はその中心にある。
反橋が1本。

渡った先には弁天島があり弁天社が祀られている〔弁天社は江戸時代(1866年)に歌人・大田垣蓮月(おおたがきれんげつ)により寄進されたもの〕。

永観堂パンフレットより

庶民を大切にし人気のあった永観らしい庭、それが魅力だ。

多宝塔 相輪が水煙型

多宝塔の相輪は通常、九輪の上に花弁がある。
ところが、永観堂の多宝塔は花弁ではなく水煙になっている。

水煙は五重塔のような塔の相輪に用いられるもので、珍しい。

火除けの阿弥陀

みかえり阿弥陀とは別の阿弥陀如来坐像がある。
弘法大師・空海が作った五仏のうちの一つ。
応仁の乱でほかの四仏が焼失してしまったが、永観堂の仏だけが残った。
右手に焼けた跡が残っていて「火除けの阿弥陀」として信仰されている。

火除けの阿弥陀、不動明王、愛染明王は、近くで見ることができる。

水琴窟

御影堂裏の阿弥陀堂と臥龍廊に別れる回廊の山裾に水琴窟がある。
音は↓から。

永観堂ホームページより

もみじの永観堂

永観堂は、紅葉が美しく「秋はもみじの永観堂」として知られる。

永観堂のもみじは平安時代に歌に謳われていた。

『古今和歌集』
「奥山のいはがきもみぢ(岩垣もみじ)ちりぬべし てる日の光みる時なくて」という歌が収録されている。
(自分は長い間宮仕えすることなく、山里にこもっているばかりだ、といった意)
作:藤原関雄

藤原関雄は平安時代の文人。
永観堂の土地はもともと藤原関雄の別荘だったところを、禅林寺を開いた真紹(しんしょう)が買い取ったところだ。

禅林寺となる以前からもみじが美しかったのだ。


国宝

絹本着色山越阿弥陀図
金銅蓮華文磬(けい)

重要文化財

阿弥陀如来像(みかえり阿弥陀)
来迎阿弥陀如来像
絹本着色当麻曼荼羅図
阿弥陀二十五菩薩来迎図
ほか全16点。

宗派

浄土宗

日本のおもな宗派

密教系 天台宗
真言宗
浄土宗系 浄土宗
浄土真宗
日蓮宗
禅宗系 臨済宗
曹洞宗
黄檗宗

永観堂ホームページ

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