【八坂神社】牛頭天王と蘇民将来を祀る疫病退散の社

◎疫病退散を担う神社
◎祇園祭は八坂神社の祭礼

ゆかりの人物:蘇民将来(そみんしょうらい)、牛頭天王(ごずてんのう)、スサノオノミコト
創建:飛鳥時代(656年)

八坂神社(やさかじんじゃ)と祇園祭(ぎおんまつり)と疫病退散


祇園祭は八坂神社の祭礼だ。毎年7月に行われる。
祇園祭は神をよびいれて疫病や災厄をもたらす疫神を鎮めるための祭
平安遷都で京都が都になり人口が増えたことで疫病が発生し、これを鎮めるために行われた御霊会がはじまりとされる。

なぜ八坂神社は疫病退散の神社なのか

八坂神社は牛頭天王を祀っている場所

牛頭天王(ごずてんのう)はインドの祇園精舎の守護神で、疫病を退治する能力をもつ。

飛鳥時代、八坂の地に渡来した高句麗人が牛頭天王を祀ったとされる。
八坂は坂が多いことを意味し、高句麗人は八坂氏と名乗った。

牛頭天王といえば祇園精舎“ということで、牛頭天王が祀られている八坂も祇園精舎 → 祇園となったと想像できる(資料:高野澄『京都の謎 伝説編』祥伝社)。

祇園精舎はインドの富豪が釈迦のために建てた寺の名前
平家物語の一節に「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす。」とあるが、実際、当時祇園社(八坂神社)には鐘があった。

八坂神社にかかせない、牛頭天王と蘇民将来のエピソード

八坂神社の疫病退散の由来として、かかせない説話がある。
牛頭天王と蘇民将来(そみんしょうらい)のエピソードだ。
つぎのようなもの。

牛頭天王と蘇民将来
北の海にいた牛頭天王が南海を旅していたところ日が暮れて宿を探していた。
そこに蘇民将来(そみんしょうらい)と巨旦将来(こたんしょうらい)の兄弟がいた。
弟の巨旦将来は裕福だったが宿泊を断った。
一方兄の蘇民将来は貧乏だったが快く栗飯でもてなした。

後日、牛頭天王が蘇民将来を再び訪ねてきて「後年自分は厄神となって国に乱入するだろうが、この茅の輪を腰につけていれば免れることができる」といいお礼にと茅の輪を贈った。
後日、疫病が流行し、みな死に絶えたが蘇民将来とその子孫は生き残ることができた。

蘇民将来は八坂神社内の「疫神社(えきじんじゃ)」に祀られている。

八坂神社には多くの摂社・末社がある。
摂社・末社は本殿の御祭神と関係の深い神々などが祀られている小さな祠。
その筆頭にあげられるのが「疫神社」。

祇園祭で人々は「蘇民将来」の子孫であることを示して無病息災を願う。

御祭神 スサノヲノミコトと牛頭天王

八坂神社は当初牛頭天王を祀る社であったが、現在の御祭神はスサノヲノミコトだ。

どこでどのように入れ替わったのかということになるが、入れ替わったわけではなく、神仏習合で仏教思想や渡来系氏族の信仰と混ざり合って、同一神とみなされるようになったと考えられている。

1783年の仏像図彙に掲載された牛頭天王と素戔嗚尊の習合神である祇園大明神

明治維新の時代、日本の神でない牛頭天王は弾圧され存在が消され、スサノヲノミコトに上塗りされた。

現在、八坂神社の御祭神はスサノヲノミコトとその妻クシイナダヒメ、その8人の子ヤハシラノミコガミ。

「祇園社」から「八坂神社」へ

室町時代の記録で「祇園社」と名づけられたとあるが、これも明治維新で強制的に「八坂神社」とされた。
つまり「八坂神社」とよばれるようになったのは、明治時代から。

八坂神社のおもな建物・祠

社殿

西楼門


応仁の乱で焼失し、1497年に再建されたもの。
正門ではない。

南楼門


実は正門。

本殿


国宝。
もともと二つの建造物を合わせて一棟の屋根で覆ったユニークな建築で「祇園造り」とよばれる。

さまざまな願いをうけとめてくれる多くの摂社・末社おもなもの

八坂神社には多くの神様が祀られている。境内内で神様ツアーができるほど。
時間をたっぷりとって周りたい。

疫神社(えきじんじゃ)


祭神:蘇民将来 ご利益:疫病除け。

太田社(おおたしゃ)

猿田彦神が白髪で白い髭を蓄えていたことから白髭明神ともよばれ、太田社は白髭社ともされる。

祭神:猿田彦神(さるたひこのかみ)、宇受女命(うずめのみこと)夫妻。

猿田彦神は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の命で瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を高千穂へ案内した神。
宇受女命は天岩戸に隠れたアマテラスを誘い出そうと、上半身裸で踊った女神。

ご利益:猿田彦神は導きの神、天鈿女命は芸能の神

蛭子社(えびすしゃ)

 
祭神:コトシロヌシノカミ ご利益:商売繁盛。「えべっさん」とよばれ親しまれる。

大国主社(おおくにぬししゃ)

祭神:大国主命(おおくにぬしのみこと)、事代主命(ことしろぬしのみこと)、少彦名命(すくなひこなのみこと) ご利益:縁結び。

祇園の御神水(ぎおんのごしんすい)

境内の湧き水。
本殿真下に龍穴とよばれる池があり、境内のそこここに湧き水がある。
大神様の力をもらえるとされる。

大神宮社(だいじんぐうしゃ)

八坂神社の御祭神のスサノオノミコトの姉の天照大御神(あまてらすおおみかみ 内宮)と豊受大御神(とようけのおおみかみ 外宮)を祀っている。
豊受大神宮は衣食住など産業の守護神。

伊勢神宮に天照大神を祀る(内宮)と豊受大御神を祀る(外宮)があり、平成17年から第62回神宮式年遷宮が行われた。
現在の八坂神社の大神社は、このときの撤去材を用いて修復されたもの。

悪王子社(あくおうじしゃ)


祭神:スサノヲノミコトの荒魂(あらみたま) ご利益:諸願成就。

美御前社(うつくしごぜんしゃ)

祭神が容姿端麗であったとの言い伝えから美容の神として信仰を集める。

ご神水「美容水」を肌に数滴つけると身も心も綺麗になるという言い伝えがある。


ご祭神:多岐理毘売命(たぎりびめのみこと)、多岐津比売命(たぎつひめのみこと)、市杵島比売命(いちきしまひめのみこと)
ご利益:美容祈願。

日吉社(ひよししゃ)

ご祭神:大山咋神(おおやまくいのかみ)、大物主神(おおものぬしのかみ)

ご利益:方除け。

刃物神社(はものじんじゃ)

苦難を断ち切り、未来を切り開く。

ご祭神:天目一箇神(あめのまひとつのかみ) ご利益:刃物供養

五社(ごしゃ)

八幡社(はちまんしゃ):応神天皇(おうじんてんのう)。武運の神。
竈神社(かまどじんじゃ):奥津日子神・奥津比売神(おくつひこのかみ・おくつひめのかみ)。竈の神。
風神社(ふうじんじゃ):天御柱命・国御柱命(あめのみはしらのみこと・くにのみはしらのみこと)。風の神。
天神社(てんじんしゃ):少彦名命(すくなひこなのみこと)。医薬の神。
水神社(すいじんじゃ):高龗神・罔象女神(たかおかみのかみ・みづはのめのかみ)。水の神。

厳島社(いつくしましゃ)


ご祭神:市杵島比売命(いちきしまひめのみこと)。素戔嗚尊が持つ剣から産まれた三女神(美御前祭神)のうちの1神。容姿端麗で舞踊に優れることから舞踊謡曲の神として、祇園の舞妓・芸妓に敬愛されている。 ご利益:美容祈願、芸能
ほか。


国宝

本殿

重要文化財

「祇園社絵図」 隆円筆
『太政官符(だじょうかんぷ)』
伝 源頼朝奉納『狛犬・獅子 一対』
西楼門
石鳥居
舞殿
手水舎
美御前社
御旅所
神輿庫
絵馬堂
日吉社
太田社
大年社
十社
五社
神馬舎
ほか。

御祭神

素戔嗚尊
櫛稲田姫命
八柱御子神

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